四国遍路 番外編 3日目 お寺の維持にもお金がかかる

四国遍路 番外編 3日目

 松山の朝

 恒例となった朝ウォークを5時前から行いました。コースは53番から54番までの歩き遍路コースを片道5km往復します。

この遍路コースは概ね海岸沿いです。瀬戸内海の夜明け前の様子

  海岸沿いですから極めて平坦な道で歩道もあり、問題なく歩けます。ただ遍路道の案内が見当たらず、少し心配になりました。

 5km地点でUターンします。帰りは来た道ですから迷うことはないだろうと思っていましたが、見知らぬ場所に出て焦りました。曲がるべきところを直進したようです。急いで戻り10kmの予定が11km強のウォークとなりました。帰ってすぐ朝食です。

民宿上松の朝食

 納豆が無いのが残念ですがおいしく頂きました。

 8時前に出発しました。今日は54番延命寺から今治の札所6か所、西条市の札所5か所巡る予定です。ただ60番横峰寺、は愛媛最大の難所ですから場合によっては翌日にするつもりです。

 今治までは朝のウォークで通った道をひたすら進みます。

54番延命寺

 予定よりやや早く延命寺に到着しました。

やや質素な印象の延命寺の山門

 9時少し前ですが駐車場には1台も止まっておらず、境内には落ち葉を掃除するおじさんが一人だけ。境内も広くないのですが大師堂は一段高いところにありました。

大師堂から見た延命寺境内

 車遍路の順打ちだと概ね同じタイミングで参拝しますから、今日は一人のお遍路とも会わずに終わってしまうのではないか、と嫌な予感が走ります。納経所に10円玉の両替がありました。お賽銭の10円は不足気味なので500円両替してもらいました。

 55番に向けて出発します。札所はほとんど電話番号を登録していますから電話番号を入力するとカーナビがピンポイントで連れて行ってくれます。便利ですが、歩き遍路時代の遍路案内マークを見落としたらどうしよう、といったストレスや案内通りにいったら道が藪になっていて悪態をつく、といったトラブルも今思えば「悪くない」と思います。

 55番は今治市の街中にあります。

 55番 南光坊

 南光坊の駐車場は境内にあります。ここも停めているのは私一人です。

南光坊の山門は四天王が守っています。前に2体、後ろに2体です

 境内には地元の人と思われる自転車の男性と携帯で迎えをお願いしている高齢女性だけです。納経所で「四天王の山門とは珍しいですね」と声を掛けると「来る時、帰る時の両方を見守っているんです」との返事。ナルホド。

56番 泰山寺

 南光坊から次の泰山寺まで3km程です。寺の前の駐車場に入ると大型のバスが停まっています。団体のお遍路でしょうか。嫌な予感がして寺に向かいました。

泰山寺。特に山門等はありません

 石段に座っている人は「先達」のネームプレートをしています。足が悪い様で、石段を登らず、下で待機しているようでした。

 境内に入ると、いました。大師堂の前で正式な参拝を皆でしています。

お寺の主催する団体というより先達主導の団体のようです

 個人の遍路が、できれば団体お遍路とかち合わないようにと祈るのは、団体遍路の場合全員分の納経帳をまとめて係りの人が納経所に持ち込むので、個人のお遍路の納経待ち時間が長くなることによります。

 今回は場合どうだろう、と納経所に行くと団体分はもう済んでいるようで、すぐ納経印を押してくれました。係りの人に個人の遍路の待ち時間について尋ねると、「うちは個人の遍路優先で団体は後回しにしますよ」との返事。今日の団体については「久しぶりの団体だった。やはり先達さんの主催する団体のよう」とのことでした。納経後駐車場に向かうときに2人連れで2組ほどの遍路さんが車から降りる時でした。簡単な挨拶をして別れました。

57番 栄福寺

 次の札所栄福寺までは3kmほど。少し小高くなったところにお寺はありました。

栄福寺の入り口。山門などはありません

先ほどの団体がいるのではないかひやひやしましたがバスはいません。

栄福寺は比較的小さなお寺です。

本堂、大師堂は一段高くなっています

 お参りを済ませ、納経の時「歩きですか」と聞かれ、足摺までは歩きで今は車、と答えると「車なら申し訳ないが駐車料金として100円お願いできないか」とのお話。断れるはずもなく駐車代も払いました。

 次の58番仙遊寺までは距離は3km程ですが標高差が200m以上あります。車で登るのも結構大変でしたが、歩き遍路にとってはきつい札所でしょう。

58番仙遊寺

上り坂の途中にある仙遊寺の山門。その裏は石段がずっと続きます

 坂の途中に「この道は寺の私道となるためその整備管理は寺の負担となるのでその一部として駐車場代普通車400円」との案内がありました。こっちは400円かよ、と思いましたが、2km以上の山道を管理するのだから協力しなければ、と思い直しました。

仙遊寺の境内

 仙遊寺は山の上にあります。駐車場には結構車が停まっていましたからにぎやかな境内を想像しましたが人はいません。

 山の上ですから見晴らしは良く、展望台もありました。

仙遊寺見晴らし台からの眺望

 また宿坊も立派です。

近代的な仙遊寺の宿坊

 納経の時、係りの人に宿坊はやっていますか?と尋ねると、「やっていますよ。今日も何人か泊まっています」との返事。駐車場の車は宿泊の人のようです。新しい宿坊ですから少しでも営業しないといけないのかもしれません。

 仙遊寺から降り、次の札所を目指します。

59番 国分寺

 今の愛媛は松山が中心ですが、今治市国分寺があるということは律令時代、ここに国府があり伊予の中心だった事がわかります。

国分寺の入り口。山門などはなく、はじめは石材屋の展示場かと思いました

 

石段を上がると立派な境内がありました

 56番の泰山寺駐車場で挨拶したご夫婦とみられる2人組と少し話しました。徳島の人でした。順打ちですからまたお会いするかもしれませんね、といって別れました。

 納経所で、来る途中に思った、「今治律令時代の中心地」について聞いてみると「そのようですね」とそっけない返事。あまり歴史に興味が無いのかもしれません。

 次は順番通りだと60番横峰寺です。ここは愛媛の札所最大の難所で険しい山中にあります。遍路のガイドブックでも「60番を飛ばし、61番、62番、63番と打ってその後60番に行った方が良い」となっていますし、まだ昼前で十分時間もあることからガイド案内通り61番を目指します。

 途中に道の駅を発見。お昼にします。車遍路だと駐車場が広く、地域の物産もあってお土産も買え、地域名産を中心とした食事メニューもある道の駅はとても便利です。この間も道の駅でお昼にしましたが、味もそこそこです。今日は

たこの天丼です

 汁もすまし汁でおいしく頂けました。

61番香園寺

 このお寺は変わっています。

ホールか何かと思ってしまった香園寺。テント右の屋根が香炉とロウソク立てです

 

ロウソク立てと香炉が一体となっています。手前が香炉

 ほかのお寺のように本堂と大師堂それぞれのろうそく立て、香炉はありませんからここで2か所分あげました。ところで本堂と大師堂はどこだ、と思って建物に近づくとそこにも賽銭箱と納札入れがあるのでお参りできるようですが、「本堂と大師堂は階段を登り2階」と案内があり行ってみました。

建物の中のご本尊

 建物の中はちょっとしたホールでご本尊を囲むように多くの椅子(それも市民会館にあるような椅子)が並んでいます。 本尊の隣に大師像が配置され、ここでそれぞれお参りしました。ただ薄暗いため、般若心経の文字が見づらく、つっかりながらのお経になってしまいました。

 納経所は建物横のプレハブです。何人か並んでいて、ここで徳島のご夫婦のご主人と少し話しました。まだ現役なので休みの日に区切りで回っている。初めての遍路で最初は母親と回ったが母が体調を崩し、今は奥さんと回っている。今までは一泊したことが一度あるだけであとは日帰り、といった内容でした。確かに四国の人であれば高速道路も整備されてきていますから日帰りで遍路できるかもしれません。

 

62番宝寿寺

 香園寺からは1kmほどです。

宝寿寺入り口

 駅前にあるお寺です。少し離れたところに駐車場があり駐車料金は300円でした。

寺そのものは大きくはありません。寺の横はJAの施設で「宝寿寺の駐車場ではありません」と何か所も案内があります。街中のお寺も大変です。

 63番 吉祥寺

 吉祥寺まではここも約1km。すぐです。

吉祥寺の山門

 境内に入ると本堂が工事中です。

工事中の本堂。大規模な工事のようです

 どこでお参りをすればよいか戸惑っていると、徳島のご夫婦が「大師堂で良いようですよ」と教えてくれました。確かに本尊は大師堂に安置してあります、との案内があります。ただロウソク立ても香炉も大師堂のものだけ。それぞれ立てるか、省略するか悩みましたが、省略で決定。お参り後、納経所で「大規模な工事ですね」と聞くと「見た目はほとんど変えず、耐震工事が中心なんです」との返事。

 四国の88か所札所も多くのお遍路が参拝にきてかなり潤ったのでしょうが、参道の整備や建物の補修などお寺の維持にはかなりお金がかかります。特にここ何年かはコロナ感染拡大によって、増えてきていた外国人も全くいなくなり、国内旅行も自粛が続きましたからどこのお寺もかなり苦しいのでしょう。駐車場代くらいは一般の遍路も協力しなければ、と思います。それにつけても納経の値段が300円というのは、遍路の立場から言えばありがたいですが、一般の御朱印に比べるとかなり安い設定です。想像ですが88か所のお寺の皆さんの会合などでは値上げも論議されているのではないでしょうか。ただ、安い納経料というのも遍路人気を支えているので慎重に検討してもらえれば、と思います。

60番 横峰寺

 いよいよ愛媛札所最大の難所横峰寺に向かいます。歩き遍路では、焼山寺の遍路ころがしなどと並び称される横峰寺です。ガイドブックの地図によれば車の場合ほとんどが林道です。それも有料。一般道(この道も決して広くはない)から林道に入ります。車のすれ違いもできない狭い山道です。新潟県から栄村の秋山郷に行く道と印象が似ていて、見通しの悪いカーブが続きます。交通量が少なく行きで2台、帰りは3台とすれ違っただけなので助かりました。それでもすれ違いはどちらかが道幅が広いところまでバックしなければなりませんから大変です。途中に料金所がありました。有料道路代が普通車1,850円!。高いと思いましたがこの道路を維持するため、と無理に納得しました。

駐車場に到着しました。駐車場の案内を見ると横峰寺はここから降ったところにあるようです。金剛杖にもご登場願い、山道を降ります。降りですから楽ですが、帰りのことを思うと憂鬱になります。しばらく行くと横峰寺の境内が見えてきました。

横峰寺の裏手に出ました

 山門を探すと境内の下にありました。

横峰寺山門

 山門の手前は本来の参道です。

険しい山道の参道

 経験しているだけに山道の参道は本当に大変です。

境内には中年女性の4人組が遍路姿でお参りしていました。話しかけようか迷いましたが、何か取っ付き辛さを感じやめました。お参りし、納経を済ませ駐車場に向かいます。登りです。

こんな坂が続きます

 歩き遍路に比べれば何ていうこともない道ですが、歩き遍路を経験したことのない人や高齢の方にとっては辛い登りでしょう。

 駐車場に着くと先ほどの女性4人組が売店の前の席で何か注文していました。彼女たちにすると一仕事終えた感覚なのかもしれません。

 こちらはすぐ降りにかかります。険しい山道の降りですから慎重に運転します。途中マイクロバスと向き合い焦りましたが、私が少しバックしてすれ違いました。料金所ではさすがに帰りも1,850円だったら怒るよ、と思いながら、行きの領収書をヒラヒラさせると手で〇をつくり行っていいよの合図。無事林道を通過しました。

64番前神寺

 前神寺はナビで電話番号設定ができず住所で入れました。案内通りに進むと目の前に前神寺駐車場の看板が。でもナビは左折を指示します。戸惑いましたが、ナビより目に見えている方を信じ直進。無事駐車場に入れることができました。

 

前神寺の入り口というか門 駐車場の手前にあります

 駐車場から境内までは少し歩きます。

本堂前はお決まりの石段です

 ここの本堂は立派でした。

前神寺の本堂

 このお寺は石鎚山修験道の拠点となっていたようで寺務所の建物も立派です。

前神寺の納経所がある建物

 宿坊ではありませんが修行する人の宿泊施設もあるようです。

境内で横峰寺へ向かう途中見かけた歩き遍路の若い方と会いました。声をかけ、私も歩き遍路をやっていたが足摺で足を痛め、車遍路に切り換えた話をすると「私も足摺で足を痛めました」とのこと。「頑張ってください」と声を掛けて別れました。

今日の宿湯之谷温泉

ちょうど午後4時で、宿に入るには良い時刻です。宿に向かいます。今日は食事付きの一般の宿泊としては満員で断られ、ドミトリーとしてほぼセルフで食事提供もベットのシーツかけも自身で行うコースでの予約です。

 部屋に入ると机がありません。ただ洗濯室に行くと机があります。ここでいいやと温泉のお風呂を済ませた後、洗濯機を回しながらブログを書き始めました。建物は新しく清潔です。

ベットが2台。間接照明だけでおしゃれな部屋です

ドミトリー棟の洗濯室 この机は重宝しました

トイレ洗面所もおしゃれです

 ドミトリー棟の宿泊者は今日は私だけのようです。夕食をとるため宿から200m程先の中華屋さんに行ったのですがやっていません。別のハンバーグ屋さんの看板を見つけ行ってみると閉店の看板が。やむなくその先のローソンで夕食とお酒を調達しました。

 部屋での飲食は禁止ということでドミトリー棟1階の談話室で夕食です。

ドミトリー棟談話室。キッチンもありテレビもあります

ローソン調達の夕飯

 メインは野菜たっぷり焼きビーフンです。

食事を済ませ8時前に就寝です。